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タンパク質およびペプチドの二次構造

振動円二色性は紫外(UV)スペクトル領域でよく知られています。多くの場合、一般的に広く、非特異的帯(例:芳香族側鎖など)と重なる吸収帯の特徴により、そのアプリケーションは限られます。特に生体分子では、吸収係数と分散係数が大きいためアプリケーションが制限されます。

赤外(IR)では分子振動が励起されます。それに従って吸収帯は一般に狭く、固有のものとなります。電子CDと異なり、IRでは情報のマスキングは確認されません。

下図は、25µm CaF2セルでD2O溶液(50mg/ml)に溶解されたヘモグロビン(左)、リゾチーム(中央)、コンカナバリンA(右)のVCDスペクトル(上段)および吸収スペクトル(下段)を示したものです。

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3種類のタンパク質の吸収スペクトルは非常に類似しています。いずれも、比較的広く、非構造のアミドI吸収帯(主にC=O伸縮モード、図中では「I」)と、アミドII吸収帯(主にC-N伸縮モードおよびN-H変形モード、図中では「II」)が確認できます。

より詳しく見てみると、ヘモグロビンのアミドI吸収帯は1650 cm-1周辺で非対称になっています。また、コンカナバリンAのアミドI吸収は1630 cm-1がピークで、1690 cm-1に小さなショルダーがあることがよく分かります。

類似した吸収スペクトルを持っていても、これらのタンパク質にはその二次構造に大きな違いがあります。ヘモグロビンは主にαヘリックス構造、コンカナバリンAの大部分はβシート構造をとり、リゾチームは両方の構造要素を、同じ量で有しています。

さらに違いが分かりやすいのは、VCDスペクトルでの二次構造です。ヘモグロビンの誘導体に似た吸収帯はαヘリックス構造でよく見られるのに対し、コンカナバリンAのVCDスペクトルが1630 cm-1で低下しているのはβシート構造独特の動作です。このことから、リゾチームのVCDスペクトルが両方の要素を含むのは当然のことといえるでしょう。

このため、VCD分光法ではタンパク質の二次構造を独自に特定するだけでなく、構造変化を観察することもできます。その他のタンパク質に関する実験では、VCDの信号が明らかに二次構造に依存していることが分かっています。

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