Ascend 1.1 GHz: 磁石技術マイルストーン

世界初、構造生物学分野向け高分解能NMR用の 1.1 GHz超電導磁石

より高分子量のタンパク質、変性タンパク質やその複合体を研究するための高感度あるいは高分解能への科学的なニーズの高まりを受けて Bruker が開発を進めていた、世界初の安定で均質なスタンダードボアの Ascend 1.1 GHz NMR 磁石を稼働させることに成功しました。

長年、高分解能NMRは、1H 共鳴周波数 1.0 GHz と同等の 23.5テスラの磁場に制限されていました。この制限は、金属の低温超伝導線材(LTS: Low-temperature superconductor)の物理的特性によるもので、フランスのリヨンにある Ultra-High Field NMR CenterのAvance® 1000 分光計によって、2009年に初めて達成されました。

高温超伝導体(HTS:  High-temperature superconductor)は、1980年代に初めて発見されました。これにより低温での高磁場への扉が開かれたものの、YBCO HTSテープ線製造や超伝導磁石技術における多数の課題により、UHFのさらなる進歩はごく最近まで極めて困難なものとなっていました。

他にない Bruker の高分解能 1.1 GHz 磁石の性能は、新しい LTS-HTS ハイブリッド磁石技術が実現する可能性を証明し、HTS材料の製造、試験、および線材の接続、ならびにUHF磁石の安定化、均質化、クエンチ保護、磁力制御の分野における飛躍的な技術的進歩を示すものです。

お客様の声

イタリアのフィレンツェ大学の Magnetic Resonance Center and Department of Chemistry の Lucia Banci 博士と Claudio Luchinat 博士は、長年にわたり Bruker 社の UHF プロジェクトのパートナーであり、世界初の高分解能 1.2GHz 分光計を所有する予定です。1.1 GHz システムでの実験を行った後、彼らは次のように述べています。「我々は UHF NMR における、この重要なマイルストーンを高く評価しています。この新しい磁場強度で、3 mmの TCI クライオプローブ を用いて実現された 1.1 GHz という結果は目覚ましい進歩であり、天然変性タンパク質に対する原子レベルの分解能でのより詳細な研究が可能になります。1.1 GHz で記録したデータは超強磁場での NMR 実験の利点を明確にするものであり、次の 1.2 GHz の段階に期待しています。」

「我々は Bruker 社の UHF 磁石テクノロジーに深く感銘を受けています。この技術により、111 kHz の magic-angle spinning(MAS)固体 NMR プローブと組み合わせた試験を実現できました。タンパク質複合体やアルツハイマーの βフィブリル等の生物学および生物医学研究において、大幅に向上した感度が重要な役割を果たすことでしょう」と解説するのは、将来的に 1.2 GHz の顧客となることが見込まれる ETH Zürich の Beat Meier 博士です。

ETH の Matthias Ernst 博士は、「この新しい装置の感度は極めて優れたもので、陽子検出高速 MAS 実験の分野への新たな応用が可能です。従来、この分野ではマグネットの均質性が問題でしたが、この新しいクラスの HTS ベース磁石の均質性は正に完璧で、我々の厳しい要求を満たしています」と述べています。

お客様の声

ドイツのゲッティンゲンにある Max Planck Institute for Biophysical Chemistry の所長であり Scientific Member でもある Christian Griesinger 博士は次のように述べています。「この1.1 GHz のデータは、静的X線構造と組み合わせることにより、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET: Förster resonance energy transfer)効果を初めて量的に説明するものです。この定量化は、現在、センサーの開発者にとってカルシウムセンサーを最適化するための揺るぎない基盤となっています。このカルシウムセンサーは、空間的に分解された蛍光を使用してニューロン内のカルシウム濃度を測定する、神経生物学において必要不可欠なツールです。我々は、1.2 GHz分光計の納入を心待ちにしています。神経変異およびがん等の多くの疾病のキープレイヤーである、天然変性タンパク質の細かい粒子およびオリゴマーの特性解析に関する現在のプロジェクトに使用する予定です。現時点では、これらの重要な無秩序系は、X線構造解析やクライオ電子顕微鏡等の構造生物学における他の方法では、オングストロームの分解能で分析することができないのです。」

テネシー州のメンフィスにある St. Jude’s Children Research Hospital の Structural Biology Department の責任者である Charalampos Kalodimos 博士は、工場での試験を完了した世界発の 1.1 GHz NMR 分光計を導入することになっています。また「本年後半、我々の研究所に最初の 1.1 GHz NMR 分光計が導入されることを心待ちにしています。分子シャペロンやタンパク質キナーゼ等の動的分子機械分野の研究において、この 1.1 GHz システムは最も重要なツールとなります。我々は Bruker 社のこの素晴らしい技術的成果を高く評価しています。」と述べています。