Bruker
Products & Solutions
Applications
Services
News & Events
About
Careers
Nuclear Magnetic Resonance (NMR) Webinar

スペクトルを単純化する測定法 糖鎖への応用

本Webinarでは、スペクトルを単純化する測定法を紹介します。狭い範囲にシグナルが重なり合った場合、シグナルの帰属が曖昧となることがあります。今回は糖鎖を題材として、複雑なスペクトルを単純化して解析した例を示します。標準的なNMR実験、選択励起パルスを用いた二次元NMR実験、および最近注目を集めているPSYCHE法をはじめとしたpure shift NMRによる高分離能なホモデカップリング測定を紹介します。

NMRでは感度と共に問題になるのが、複雑に重なり合ったスペクトルからどのように各シグナル成分を分離するかという問題である。たとえばタンパク質や核酸のNMRでは、非常に大きな化合物の複雑に重なり合ったシグナルを分離するために、同位体標識されたサンプルと多次元測定を用いる。しかしこの手法は汎用的に用いることが難しく、同位体標識できない化合物では多次元測定によるシグナルの分離は限られている。このような場合、スペクトルを単純化して解析をおこなう手法が有用なアプローチとなる。本webinarではそのような単純化の手法としてPure shift NMRと選択励起を用いた二次元 (選択励起2D) 測定を紹介する。

Pure shift NMRと選択励起2Dでは異なるアプローチでスペクトルを単純化する。まず、Pure shift NMRでは同種核間でのJカップリングをスペクトルからすべて消去し、シングレットとすることでシグナルを先鋭化できる。1Hや19Fのように天然存在比の高く、カップリングのパターンが複雑になる核種では同種核Jカップリングの消去によって混雑したシグナルの分離が改善することが期待できる。同種核間でのカップリングを消去する測定法はホモデカップリング実験として古くから知られているが、中でも観測範囲の全領域 (ブロードバンド) にホモデカップリングを行う手法をPure shift NMRと呼び、近年注目を集めている。ZS (Zangger-Sterk) 法やPSYCHE (Pure Shift Yielded by CHirp Excitation) 法などを中心に、その手法も種々開発され実用化への期待も高まっている。

一方で選択励起2Dでは、着目するスピン系のシグナルのみをスペクトルから抽出することによって混雑したスペクトルを単純化する。一般に2Dスペクトルの解析が困難な場合、次元を上げて分離能を上げる方法があるが、シグナルが狭い領域に重なり合っていると依然として解析が難しい。また同位体標識なしに多次元測定を高いデジタル分解能で測定するには非常に長い時間がかかる。そこで選択励起(2D)を活用すると、着目するスピン系のみからなる2Dスペクトルが得られ、効率よく解析がおこなえる。たとえば、選択励起パルスを用いたTOCSYの後ろにDQF-COSYのパルスシーケンスを入れることで一枚の2Dスペクトル上に、1Hのカップリングを介したネットワークの相関のみが観測されるので解析が容易となる。 これらの測定手法の有用性を示すために、本webinarでは糖鎖への応用事例について紹介する。糖分子が鎖状に連なった糖鎖は、核酸およびタンパク質に続く第3の生命鎖であり、近年その生化学的な重要性がますます注目されてきている。一方で糖鎖の構造解析にはNMRが有用であると認識されながらも、タンパク質や核酸のように確立されているとは言えない。その理由は、糖鎖を構成する単糖の各構造が非常に似ているため一部のシグナルを除き、狭い範囲にシグナルが激しく重なり合い、また、分岐構造と結合位置の多様性を有しているため、配列構造すら複雑になるからである。

このような糖鎖の複雑なスペクトルの解析にはスペクトルの単純化が非常に有用なアプローチとなる。Pure shift NMRでは、ホモデカップリングされた分離の良いシグナルの2D測定を使うことで糖鎖のスペクトルの混雑した領域(1ppm程度の範囲)の相関を解析しやすくすることができる。選択励起2Dでは分離の良いシグナルを起点としてそれぞれの糖残基のスピン系のみからなるスペクトルが得られるので解析が簡便となる。両手法はアプローチこそ異なるものの、いずれも今後の糖鎖のNMR研究の発展に役立つものであると考える。

Watch Recording

Who Should Attend?

  • 複雑なスペクトルの改善を求められている方
  • 糖鎖のNMR解析を行う研究者

平野 桐子
バイオスピン事業部 アプリケーション部  

大学在学中に糖タンパク質の合成研究を通じ、NMRやMS、LCなどの種々の分析手法に出会う。NMRは測定原理がシンプルな一方で、得られる情報量の多さや繊細さという特徴をもち、その魅力に惹きつけられ続け、現在に至る。  

佐藤 一
バイオスピン事業部 アプリケーション部  

1993年入社。以来アプリケーション部に所属。溶液NMRを担当。学生時代はDNA/RNAオリゴマーのNMR解析を行っていた。