Nuclear Magnetic Resonance (NMR) Webinar

固体NMRによる多核測定の設定

機能性材料に代表される、これまでの材料には無い新しい付加価値を持つ材料には、有機、無機の垣根を越えた様々な元素(核種)が含まれていることがあります。多岐にわたる核種を観測できるNMRは、このような材料の構造解析に非常に有効な手段といえます。本Webinarでは、固体NMRによる多核を用いた研究を進める上で、自ら新しい核種の設定をストレスなく行うことができることを目標とし、その手順等を説明します。

多くの方が最初にNMRで観測する核種は、私たちを取り巻く生態系を形成し、自分自身の体をも構成する、最も身近にある原子核である1H、13Cだと思います。弊社でも講習会等で、基本的なNMR測定を学んでいただく際には、これらの核種を用いています。しかし、今日、科学技術が進歩し、新たな産業、技術が生まれると同時に、これまでの材料には無かった付加価値を持った機能性材料が多く開発されてきています。こうした材料には、有機、無機の垣根を越えた様々な核種が含まれており、多岐にわたる核種からアプローチができるNMRはますます重要な分析手法となってきています。特に自動車、電気、化学分野には顕著に表れています。こうした環境の下、皆様が日々の測定で、所有のNMRに未設定の核種の測定の必要性が生じた際、自ら設定するのはとても不安があると思います。本Webinarではそうした不安を取り除き、安心して新たな核種の設定ができるよう、実際の手順に基づいて以下の内容でその方法を説明します。

原子核には大きくスピン量子数Iが1/2の核と、I>1/2の四極子核に分けられます。これらの核種は、とりわけ固体NMRでは取り扱いの違いに注意が必要です。例えば、90°パルスの決め方一つをとってもこれらでは方法が異なりますので、その理由を説明します。 ハードの変更。RFケーブルの取り回しは変える必要はありませんが、全ての固体プローブは周波数領域を変更できるスイッチロッドが設置されています。プローブ毎のスイッチロッドの適切な設定方法を説明します。

TopSpin上での変更。13Cの測定パラメーターを元に設定を開始します。設定核種が置かれている環境により3つのパターンが考えられます。 ① 周りに1HがありCPMAS測定を行いたい。 ② 周りに1Hがあり、シングルパルスでかつ1H-デカップリングを行いたい。 ③ 周りに1Hは無く、シングルパルス測定を行いたい。 これらの条件に対応した13C測定のテンプレートはそれぞれ①13C-CPMAS、②13C-DDMAS、③13C-DDMASになります。適切なテンプレートを選択し、続いてTopSpin上で観測核種の変更、Channel Routingの変更を行います。この手順について説明します。

(4) I=1/2、I>1/2(四極子核)それぞれでの90°パルスの決め方と注意点について、代表的な数種類の核種を実例に説明します。90°パルスのパルス幅、パワーレベルの設定は不安な点の一つであると思われますので、その設定基準についても言及します。さらに、新しい設定核種でCPMAS測定を行うための、Hartmann-Hahn条件の設定方法を説明します。 本Webinarを受講することで、新しい核種の設定方法を習得し、皆様がNMR実験を多角的に行える手助けになることを望んでいます。

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Who Should Attend?

  • 固体NMRの基本的なオペレーションをおこなえる方
  • 極子核の測定について学びたい方
  • 無機元素を含む材料を分析されている方
  • 体NMRで広く多核の測定をおこないたいと考えている方

What Attendees Will Learn?

NMRを使った化学反応の経時的モニタリングは従来おこなわれてきた手法であるが、サンプルの混合、測定の準備、測定間隔の時間管理など、操作面で煩雑さをともない、ルーチン的におこなえる分析ではありませんでした。新しいInsightMRTM反応モニタリングシステムは、Bruker BioSpinのNMRシステムと統合する形で反応モニタリング用のフローセルとデータ取得のオートメーションソフトウェアを提供し、NMRの専門家でない方でも簡単にNMRによる化学反応のモニタリングを可能とします。本セミナーではInsightMRTMの詳細と実際の利用例について紹介します。

畑中 稔
ブルカージャパン バイオスピン事業部 アプリケーション部  

タンパク質のフォールディングに興味を持ち、学生時代は赤外、ラマン分光でタンパク質研究を行っていました。ポスドクから固体NMRに転身し、それ以降、固体NMRによるタンパク質研究を軸に活動してきました。今もなお進化し続ける固体NMR測定技術そのものにも興味が尽きません。  

木村 英昭
ブルカージャパン バイオスピン事業部 アプリケーション部  

1998年群馬大学大学院工学研究科生産工学専攻博士後期課程修了。その後、NEDO Fellowとして(財)化学技術戦略推進機構、日本学術振興会特別研究員として東京工業大学、筑波大学VBLでのポスドクを経て、2005年に住友ゴム工業(株)入社、2012年ブルカー入社