火山学: マグマの進化過程のSEM-EDS分析

 何万年にもわたる火山岩の形成過程を研究する場合に、SEM-EDSは強力な手段となります。火成鉱物の組成累帯構造は、地質学的プロセスや、噴火前のマグマ溜りでの圧力、温度、揮発性物質の存在などの情報を詳細に記録しています(参考文献 1)。ここでは複雑な累帯構造を持つ斜長石のEDSマップ分析を紹介し、マグマ溜りの進化を明らかにします。

 EDSマップは、岩石や鉱物中の定量的な元素分布をナノスケールで取得できる、非常に高速な分析手法です。EDSを使用すると、岩石試料の鉱物組成をほんの数分間で測定することができます。ESPRITソフトウェアのHyperMap機能でピクセル毎に保存されたスペクトルを再解析して、鉱物組成の分布のより詳細な変化を調べることも可能です。

大きな斜長石を含む火山岩のNa、K、Caの元素マップ。Sample courtesy of Dr. Daniel J. Smith, Department of Geology, University of Leicester, UK.

 ESPRITソフトウェアの相分析機能でフェーズマップを作成し、サンプル中での組成の違いを明確に区別することも可能です。フェーズマップでは、鉱物の種類だけでなく、アノーサイト(An)成分比率の異なる斜長石のような固溶体を区別することも可能です。多変量解析を用いた相分析では、各元素の強度マップよりはるかに効果的に相を区別することができます(右図)。さらに、相分析機能では各相の面積比を計算することができ、ポイントカウンティング法よりも効率的で正確にモード組成を評価することができます(下表)。

 マグマの生成と分化は1万年~10万年オーダーのタイムスケールですが(参考文献 2)、XFlash® 760とESPRITソフトウェアを使用すると、ほんの数分間でその過程を記録した鉱物のマップ分析を行うことができます。

5サイクルのマグマの若返り、分化、融食を示す斜長石のフェーズマップ


参考文献:

[1] Ginibre, C., Wörner, G., Kronz, A. (2007): Crystal zoning as an archive for magma evolution. Elements, 3(4), 261-266.

[2] Turner, S., Costa, F. (2007): Measuring timescales of magmatic evolution. Elements, 3 (4), 267-272.