赤外分光法における反射法とは?

FT-IR測定を行う際、透過法、全反射吸収(ATR)法、反射法という測定手法を用いることができます。この3つの手法は、赤外光と物質の相互作用を調べるという同じ基本原理に基づいていますが、赤外光の検出方法は異なります。

反射法を使用する理由

赤外分光法では、赤外光が試料に照射され、赤外光と試料が相互作用します。赤外光の一部は試料に吸収されますが、一部は試料の表面で反射されます。透過法やATR法では、試料と相互作用した後に試料を透過した赤外光が検出されます。

一方、反射法では、試料表面で反射した光が検出されます。この違いから、反射法は透過法やATR法では分析が難しい、あるいは不可能な試料の測定に適しています。

反射法の種類

反射法には、3つの種類があります:

  • 反射吸収法
  • 鏡面反射法
  • 拡散反射法

反射吸収法

反射吸収法は、「透過反射法」とも呼ばれ、透過法に基づく測定手法と似ています。このプロセスでは、赤外光が試料を透過した後、反射基板で反射されます。この手法を用いる場合は、赤外光が完全に吸収されることなく試料を往復で透過できるように、試料を非常に薄く調整する必要があります。

赤外光の入射角度を変えることで、赤外光が試料を透過する光路を変化させることができます。例えば、入射角度を大きくすると、赤外光が試料を透過する光路が長くなり、試料が吸収する赤外光の量が増加します。したがって、入射角度が十分であれば、厚みが1分子程度の非常に薄い試料でも反射吸収法で分析することが可能です。

このように、反射吸収法は、組織片やコーティングのような非常に薄い試料の測定に適しています。また、層やコーティングの厚さを測定したり、材料の表面を解析するためにも使用できます。

反射吸収法は透過法と類似しているため、得られるスペクトルも非常に類似しています。反射吸収スペクトルは、透過法で得られたスペクトルと直接比較することができ、さらなるデータ処理を必要としません。

鏡面反射法

鏡面反射法では、赤外光は試料表面で反射された光を検出するため、試料自体が滑らかで反射性が高い必要があります。金属コーティング、プラスチック、ガラス、鉱物、宝石など、あらゆる反射性材料の分析に適しています。また、非接触で分析できるため、材料の迅速な識別や美術品の分析にも最適です。

しかし、鏡面反射法では、反射吸収法で得られるスペクトルとは全く異なるスペクトルになるという難点があります。これは主に、異なる波長の 赤外光が試料とどのように相互作用し、反射するかの違いによるところが大きいと考えられます。

このとき生じるスペクトルの変化は、KKT(クラマース-クロニッヒ-変換)と呼ばれる数学的演算によって補正することができ、鏡面反射法で得られたスペクトルと透過法で得られたスペクトルを比較することができます。

しかし、KKTには2つの要件があります。まず、測定は赤外光が試料に対して極力垂直になるように行う必要があります。もう1つは、試料からは鏡面反射光のみとなり、散乱光や乱反射光は存在しないことです。これらの条件を満たすことができれば、KKTで得られるスペクトルは非常に高品質なものとなります。

拡散反射法:DRIFTS
 

鏡面反射法では、赤外光を試料に当てたときに生じる拡散反射光が存在しないことが必要ですが、その逆で、拡散反射光を測定する手法があります。この手法は、拡散反射法(DRIFTS)と呼ばれ、赤外光は試料と相互作用しながら、試料中の粒子からあらゆる方向に散乱されます。その散乱光を、凹面鏡で集光し検出します。

拡散反射する光の量は、試料の屈折率だけでなく、試料中の粒子の形状、大きさなど、試料の性質に大きく依存します。DRIFTSスペクトルの質は、検出された拡散反射光の量に直接関係します。そのため、高品質なスペクトルを取得するためには、赤外光が試料を深く透過して拡散反射光の量を増やす必要があります。つまり、適切な試料調製が極めて重要です。

DRIFTS測定のために適切な試料調製は、試料中の粒子を細かく均一に分散することです。そのため、事前に試料を粉砕し十分に混合します。このとき、吸収の強い試料の場合は、赤外光と相互作用しないKBrなどの粉体で試料を希釈する必要があります。これらの前処理により、赤外光は試料をより深く透過した拡散反射光となり、高品質のDRIFTSスペクトルを取得することができます。

しかし、得られたDRIFTSスペクトルは、透過スペクトルとは異なるように見えることがあります。DRIFTSスペクトルは、確かに透過スペクトルと類似していますが、それぞれのピーク強さや形は、完全に一致する訳ではありません。これらのスペクトルには大きな違いがあり、データの解析を困難にします。

透過法では、信号の強さは試料の濃度に直接関係します。このため、赤外スペクトルは試料中の化学種の定量に使用することができます。しかし、DRIFTSスペクトルにはこの関係は存在しません。そこで、Kubelka-Munk(クベルカ-ムンク)関数を使用することでこの違いを補正し、透過スペクトルに非常に近いスペクトルを取得することができます。

DRIFTSの試料調製には多大な労力を要し、データ処理も必要ですが、DRIFTSの総合的な結果は優れたスペクトル品質であり、様々な固体試料の分析に使用できます。DRIFTSは、土壌、触媒、鉱業原料の分析に最適です。また、地質学などの研究分野や、固体試料の定量化を必要とするあらゆる用途に使用できます。

これら3つの反射測定技術により、組織、土壌、美術品など、さまざまな固体試料の高品質なFT-IRスペクトルを簡単に取得することができます。当然ながら、反射法が常に適切な手法であるとは限りませんので、透過法やATR法を理解し、それぞれの試料に適した手法を選択することが重要です。

FT-IR Routine Spectrometers

Related Products