アプリケーション例 - 磁気共鳴

NMRを用いたオリーブ収穫物の含油量の分析(For Research Only)

For research only.

 オリーブオイルの健康効果はよく知られています。その成分には必須脂肪酸であるリノール酸、リノレン酸のほか、超低比重リポタンパク質コレステロールを減少させるオレイン酸などの一価不飽和脂肪酸も含まれています。また、トコフェロールやフェノールといった抗酸化物質は、体をフリーラジカルによる細胞障害から守ってくれます。

しかしながら、オリーブの実が育つまでには、例えば潅水の影響などの環境条件の変化があり、オイルの品質が低下して、健康効果も弱まってしまうおそれがあります。

核磁気共鳴(NMR)法のような分析技術は、水分ストレスを受けたオリーブの木のオイル産生状況を有効に評価することができ、オリーブ園での至適な成育条件を導き出すために役立ちます。

食品サービス技術研究センターのInstituto de la Grasaとマドリード工科大学の研究者たちは、複数のオリーブ園を幾つかの区域に分け、それぞれ潅水のレベルを変えて、オイルの品質の変化を2012年と2013年の2シーズンにわたって観察しました。

正午の茎の水ポテンシャル(Ψstem、MPa)を油分の合成期間中、15日ごとに測定しました。潅水処理は処理を行った全区域で、Ψstemを有意に変化させることが分かりました。対照区域では両シーズンとも、低水量の処理区域に比べてΨstem値が高くなりました。全体として、2013年には2012年よりΨstem値は低くなりました。

収穫後に、油分量、脂肪酸組成および抗酸化成分を測定してオイルの品質を分析しました。

さらに、乾燥サンプルをBruker MiniSpec MQ-10 TD-NMRで分析し、総油分量を求めました。この装置はバルク測定を行えるため、サンプル調製は不要です。また、光学的手法では時に問題になることですが、色や不透明度がデータに影響する心配もありません。2012年には、平均オイル産生量に有意差は認められませんでした。しかし2013年には、対照区域の産生量がいずれの処理区域の産生量も大きく上回る結果となりました。

脂肪酸組成の分析では、2012年の収穫物に有意差は認められませんでした。しかし2013年には、潅水量が最小だったオイルは対照と比較してオレイン酸濃度が有意に低く、リノール酸濃度は有意に高く、高ストレス環境ではオレイン酸からリノール酸への不飽和化が促進されることが示唆されました。

抗酸化物質であるトコフェロールおよびフェノール濃度の分析では、2012年、2013年の両シーズンとも、フェノール類分子の濃度に有意な影響がみられました。2012年には、潅水量が少ない区域ほど、複雑で豊富にあるフェノール類分子の濃度は大きく低下していました。2013年の収穫物でもこの傾向は同じでしたが、それに加えて、単純なフェノール類分子も減少していました。

NMRをはじめとする分析技術で観測された、オイルの産生量と組成の有意な変化は、Ψstemの減少と相関することも分かりました。研究者らはこれらのデータを基に、オイル産生量、脂肪酸、フェノール量および酸化安定性を最大限に増やすためには、油分の合成期間中、最低でも-2.21 MPaのΨstem値を維持することを推奨しています。

参考文献:

García J.M. et al. (2020). Deficit Irrigation During the Oil Synthesis Period Affects Olive Oil Quality in High-Density Orchards (cv. Arbequina). Agricultural Water Management. https://doi.org/10.1016/j.agwat.2019.105858.