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デンドロビウムの多糖類の特性解析

デンドロビウムの多糖類は、健康食品および機能性食品の分野だけでなく、医薬品業界でも天然の免疫刺激剤としての可能性の研究が進むでしょう。

デンドロビウムの多糖類は、健康食品および機能性食品の分野だけでなく、医薬品業界でも天然の免疫刺激剤としての可能性の研究が進むでしょう。

デンドロビウムは、中国各地に広く分布する蘭の一種です1。その中でも約30の品種に何らかの健康効果があることが明らかにされています2。実際に、デンドロビウムは中国では最も効用のある不老不死の薬草として知られています。数千年前から、中国南部では、病に冒された家族を治療するために、多くの人が自らの命を危険にさらしてまで不安定な崖に生息するこの薬草を摘もうとしてきました。今日でも、中国では発熱、結核、炎症、消化不良、さらには癌といった疾病の治療に幅広く利用されています。さらに、視力維持、食欲増進、消化促進、および長寿のための強壮剤または健康補助食品としても摂取されています。

臨床研究により、デンドロビウムには免疫機能を高める効果があることが立証されています。172名の慢性咽頭炎患者を対象とした臨床試験では、デンドロビウムベースの治療薬によって62名が完治し、さらに87名については症状の改善が見られました3。また、ヘリコバクターピロリ菌や結核菌による感染も根絶する効果があることがわかりました。さらに、腫瘍に対する効果や血糖値の安定化といった効果も報告されています。

こうした結果から、デンドロビウムを用いた新薬開発の可能性に大きな関心が寄せられています。

デンドロビウムの中でも多く見られる品種の1つであるデンドロビウムデボニアナムの生理活性成分については、多くの研究が行われていますが、それらは主に芳香族化合物、フラボン、単純な芳香族酸や芳香族エステルを中心としたものです4。免疫機能の活性化に関わる数多くの多糖類の研究は、まだそれほど進んでいません。多糖類の生物活性は、通常は分子の大きさ、構成要素の単糖、立体配座、およびグリコシド結合といった構造と化学的特性によって決まるため、デンドロビウムデボニアナムの多糖類についても、そうした情報を特定することが重要です5, 6

最近の研究で、デンドロビウムデボニアナムの多糖類の構造的特徴と化学的特性の詳細が明らかになっています7。また、マクロファージモデルを用いた多糖類の免疫調節活性も確認されています。 

デンドロビウムデボニアナム多糖類の試料は、Bruker のAVANCE™-400 NMRで1Hおよび13Cのスペクトル測定が行われました。また、Bruker のBioScope™ ResolveバイオAFMを使用して、デンドロビウムデボニアナム多糖類の分子表面形態分析が行われました。

デンドロビウムデボニアナム多糖類の分子量、多分散指数、および慣性半径が測定されました。その後の高分子溶液理論の適用により、デンドロビウムデボニアナム多糖類は水溶液中では球形で存在することが明らかになっています7。これは、原子間力顕微鏡法による分析で、明確な球体として観測されたことで確認されています。多糖類の分岐は最小限であり、また、分子凝集は確認されませんでした。この多糖類は、β-1,4-D-Manpグリコシド結合によって特徴付けられる高マンノース型です。マンノース残基の一部では、O-2またはO-3の位置でアセチル基との置換が若干確認されました。

デンドロビウムデボニアナム多糖類へのマクロファージモデルの曝露試験では、一酸化窒素放出および捕食を含め、免疫活性の効果が確認されました。この論文の執筆者らは、デンドロビウムデボニアナム多糖類における高いマンノース含有量が、その免疫調節活性に寄与すると仮定しています。

こうしたデンドロビウムデボニアナム多糖類の化学的特徴と薬理学的活性に関する更なる知見を得たことで、その構造と生物活性の関係性に関する理解はさらに深まり、デンドロビウムデボニアナムを含有する機能性食品、さらには新薬の開発を大きく前進させると考えられます。
 

参考文献

1. Sun J, et al. Natural Product Research 2014;28(21):1900–1905. 

2. Ng TB, et al. Applied Microbiology and Biotechnology 2012;93(5):1795–1803.

3. Liao Ning Zhong Yi Za Zhi (Liaoning Journal of Traditional Chinese Medicine) 1992;3:31.

4. Xing X, et al. Bioactive Carbohydrates and Dietary Fibre 2013;1(2):131–147.

5. Ferreira SS, et al. Carbohydrate Polymers 2015;132:378–396.

6. Tong L, et al. RSC Advances 2016;6(46):40250–40257.

7. Deng et al. Carbohydrate Polymers 2018;180:238–245.

References

  • Sun J, et al. Natural Product Research 2014;28(21):1900–1905.
  • Ng TB, et al. Applied Microbiology and Biotechnology 2012;93(5):1795–1803.
  • Liao Ning Zhong Yi Za Zhi (Liaoning Journal of Traditional Chinese Medicine) 1992;3:31.
  • Xing X, et al. Bioactive Carbohydrates and Dietary Fibre 2013;1(2):131–147.
  • Ferreira SS, et al. Carbohydrate Polymers 2015;132:378–396.
  • Tong L, et al. RSC Advances 2016;6(46):40250–40257.
  • Deng et al. Carbohydrate Polymers 2018;180:238–245.