Bruker社が、世界初の構造生物学分野向け高分解能NMR用の1.1GHz超伝導磁石を発表

均一な25.9テスラのスタンダードボアNMR磁石が世界記録を樹立

Ascend 201.1 20Ghz

2019年4月8日、カリフォルニア州アシロマ。第60回Experimental Nuclear Magnetic Resonance Conference(ENC、www.enc-conference.org)において、生物構造学および機能性天然変性タンパク質(IDP)研究のための超強磁場(UHF: ultra-high field)高分解能NMR分光法におけるブレークスルーをBruker社が発表しました。UHF NMRは、構造決定分子動力学、および溶液中や生理的条件下での機能性フォールディング、インタラクトーム、薬物結合情報を提供し、X線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡等、構造生物学における他の方法と相互に補完する関係にあります。

Brukerは2018年末頃、安定で均質なスタンダードボアのAscend 1.1 GHz NMR磁石の励磁に世界で初めて成功しました。この磁石は、より高分子のタンパク質の研究や変性タンパク質の研究、高分子複合体の研究に欠かせない、感度の向上および分解能の向上という科学的要件に対応するために開発されました。ここ数か月の間に、BrukerとUHFの主要な共同研究者が、Brukerがスイスに所有するGHzクラスのマグネット工場で実施された一連の高分解能の固体NMR実験を通じ、この最新技術の能力と優位性を実証しました。

長年、高分解能NMRは、23.5テスラの磁場(1H共鳴周波数1.0GHzと同等)に制限されていました。この制限は、金属の低温超伝導線材(LTS: Low-temperature superconductor)の物理的特性によるもので、フランスのリヨンにあるUltra-High Field NMR Centerの Avance® 1000 分光計によって、2009年に初めて達成されました。

高温超伝導体(HTS:  High-temperature superconductor)は、1980年代に初めて発見されました。これにより低温での高磁場への扉が開かれたものの、YBCO HTSテープ線製造や超伝導磁石テクノロジーにおける多数の問題が起こり、UHFのさらなる進歩はごく最近まで極めて困難なものとなっていました。他に類のないBrukerの高分解能1.1 GHz磁石の性能は、新しいLTS-HTSハイブリッドマグネットテクノロジーが実現する可能性を証明し、HTS材料の製造、試験、および線材の接続、ならびにUHF磁石の安定化、均質化、クエンチ保護、磁力制御の分野における飛躍的な技術的進歩を示すものです。

「この記録的な25.9テスラNMR分光計は、LTS-HTSハイブリッド超伝導マグネット分野、UHF NMRプローブ分野、ならびに分光計開発における当社の技術的能力を実証するものです」とBruker BioSpinグループの社長であるFalko Busse博士は述べています。「当社は、新しい周波数のNMRを生命科学研究界に向けて再び提供し、生化学、構造生物学、材料科学の最先端領域を開拓していくことを誇りに思っています。この1.1 GHzシステムはまた、Brukerが開発中の初の1.2 GHz NMR磁石への重要なマイルストーンでもあります。」

イタリアのフィレンツェ大学のMagnetic Resonance Center and Department of ChemistryのLucia Banci博士とClaudio Luchinat博士は、長年にわたりBruker社のUHFプロジェクトのパートナーを務めており、世界初の高分解能1.2GHz分光計を所有する予定です。1.1 GHzシステムでの実験後、彼らは次のように述べています。「我々はUHF NMRにおける、この重要なマイルストーンを高く評価しています。この新しい磁場強度で、3mmのTCI CryoProbeにより実現された1.1 GHzという結果は目覚ましい進歩であり、天然変性タンパク質に対する原子レベルの分解能でのより詳細な研究を可能にします。1.1 GHzで記録したデータは超強磁場でのNMR実験の長所を明確にするものであり、1.2 GHzでの次の段階に期待しています。」

「我々はBruker社のUHFマグネットテクノロジーに深く感銘を受けています。この技術により、111 kHzのmagic-angle spinning(MAS)固体NMRプローブと組み合わせた試験を実現できました。タンパク質複合体やアルツハイマーベータフィブリル等の生物学および生物医学研究において、大幅に向上した感度が重要な役割を果たすことでしょう」と解説するのは、将来的に1.2 GHzの顧客となることが見込まれるETH ZürichのBeat Meier博士です。ETHのMatthias Ernst博士は、「この新しい装置の感度は極めて優れたもので、陽子検出高速MAS実験の分野への新たな応用が可能です。従来、この分野ではマグネットの均質性が問題でしたが、この新しいクラスのHTSベースマグネットの均質性はまさに完璧で、我々の厳しい要求を満たしています」と述べています。

ドイツのゲッティンゲンにあるMax Planck Institute for Biophysical Chemistryの所長でありScientific MemberでもあるChristian Griesinger博士は次のように述べています。「この1.1GHzのデータは、静的X線構造と組み合わせることにより、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET: Förster resonance energy transfer)効果を初めて量的に説明するものです。この定量化は、現在、センサーの開発者にとってカルシウムセンサーを最適化するための揺るぎない基盤となっています。このカルシウムセンサーは、空間的に分解された蛍光を使用してニューロン内のカルシウム濃度を測定する、神経生物学において必要不可欠なツールです。我々は、1.2 GHz分光計の導入を心待ちにしています。神経変異およびがん等の多くの疾病のキープレイヤーである、天然変性タンパク質の細かい粒子およびオリゴマーの特性解析に関する現在のプロジェクトに使用する予定です。現時点では、これらの重要な無秩序系は、X線構造解析やクライオ電子顕微鏡等の構造生物学における他の方法では、オングストロームの分解能で分析することができないのです。」

テネシー州のメンフィスにあるSt. Jude’s Children Research HospitalのStructural Biology Departmentの責任者であるCharalampos Kalodimos博士は、工場での試験を完了した世界発の1.1 GHz NMR分光計を導入することになっています。また、「本年後半、我々の研究所に最初の1.1 GHz NMR分光計が導入されることを心待ちにしています。分子シャペロンやタンパク質キナーゼ等の動的分子機械分野の研究において、この1.1 GHzシステムは最も重要なツールとなります。我々はBruker社のこの素晴らしい技術的成果を高く評価しています。」と述べています。

Brukerはまた、本日、ドイツのベルリンにあるLeibniz-Forschungsinstitut for Molecular PharmacologyのHartmut Oschkinat博士とAdam Lange博士から1.2 GHz NMRシステムの追加購入注文を受けたことを発表しました。当社はヨーロッパ全体でこれまでに合計9台の1.2 GHz NMR分光計の注文をいただいています。

 

Bruker Corporation について

Bruker社は、科学者による画期的な発見や、人々の生活の質を向上させる新しいアプリケーション開発を可能にしています。当社の高性能な科学機器や、高価値の解析・診断ソリューションは、科学者による分子レベルや細胞レベル、顕微鏡レベルでの生命や物質の調査を実現します。お客様と密接な連携をとることにより、生命科学分子研究、応用アプリケーションや医薬アプリケーション、顕微鏡検査やナノ分析 、産業アプリケーションの分野において、また細胞生物学、前臨床イメージング、臨床フェノミクスおよびプロテオミクス研究、臨床微生物学等において、技術革新および生産性の向上、さらにはお客様の成功を支援します。

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