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マイクロプラスチックの分析と特性評価

マイクロプラスチックとは?

定義によると、直径が5 mmより小さいポリマー粒子をマイクロプラスチック(MP)粒子と呼びます。マイクロプラスチック粒子は、その発生源によって一次粒子と二次粒子に分類されます。マイクロプラスチックが高濃度で発見された場所は増加を続けているため、マイクロプラスチック汚染の分析は、困難ではあるものの非常に重要な作業です。

マイクロプラスチックはどこから来ますか?

マイクロプラスチック粒子は、一次粒子と二次粒子に分類できます。一次マイクロプラスチック粒子(MPP)は、産業用途向けに意図的にに製造されたものです。たとえば化粧品に含まれるピーリング粒子などが該当します。二次MPPは、肉眼で見えるサイズのプラスチック部品の物理的劣化や生物学的分解、化学分解によって形成されるものです。これが、環境に放出されるマイクロ粒子の主な放出源です。主に、不適切に廃棄されたプラスチックごみの劣化や分解、タイヤの摩耗、合成繊維の洗濯などによって生み出されます。

マイクロプラスチックはどこで見つかりますか?

川床、北極氷原、天然肥料、土壌、さらには飲料水にも、顕著な量のMPPが含まれます。ここ数十年で、マイクロプラスチックは人類の食物連鎖にまで入り込みました。つまり、マイクロプラスチック粒子はあらゆる場所に広がり、深刻な環境問題となっています。

マイクロプラスチックは私たちにどのように影響しますか?

主に海洋生物への脅威は判明しているものの、現時点では十分に評価することはできていませんが、海洋生物と魚に取り込まれれば、人の食物連鎖がマイクロプラスチックで汚染されます。MPPには問題のある可塑剤が含まれている可能性があり、さらにその他の有機汚染物質も吸収されているため、長期的な影響はほとんど予測不可能です。

マイクロプラスチックはどのようにして見つけられますか?

ミリメートルサイズの粒子がすでにMPPと見なされており、これらは裸眼でも見分けられますが、マイクロプラスチックを検出する最も基本的な手法としてまず挙げられるのは、光学顕微鏡検査です。しかし、このアプローチでは化学的な同定は行えません。検出されたMPPの影響や発生源の調査では、化学的な同定が特に重要になります。FTIR分光法とラマン分光法により、未知のポリマー粒子を数分以内で同定できる可能性が得られます。これらの方法は、顕微鏡技術とまったく問題なく両立できます。

海塩に含まれるマイクロプラスチックのFTIRイメージングによる分析

Plastic waste beach
Microplastics Beach

マイクロプラスチックの分析はどのようにして行われますか?

顕微鏡検査はマイクロプラスチックを検出する最も迅速で簡単な方法ですが、その有効性は、赤外線分光法やラマン分光法と組み合わせた場合に、つまり化学分析と組み合わせて使用した場合に大幅に向上します。赤外線(FTIR)分光法とラマン分光法は、ポリマーを高い信頼性で同定することができ、顕微鏡内に実装できます。この点では、ブルカーは総合的なアプローチを重要視しています。MPPは、人的ミスの入り込む隙を減らしながらも、高い信頼性で検出し、迅速に同定する必要があります。次の図に、ブルカーのマイクロプラスチック分析製品のポートフォリオを示します。

Microplastic solutions overview

FTIR分光法によるマイクロプラスチック分析

赤外線(IR)分光法あるいはフーリエ変換赤外(FTIR)分光法は、マイクロプラスチックを同定する最も一般的な方法です。名前からわかるように、赤外線放射を粒子と相互作用させ、特定の波長の吸収による情報を得ます。赤外線分光法について詳しくは、こちらをご覧ください。

比較的大きい粒子は、従来からある顕微鏡検査と標準的なATR FTIRスペクトロメータを組み合わせることにより検出および分析できますが、大部分のMPPには、FTIR顕微鏡が必要になります。FTIRの最も大きな利点は、類まれなる信頼性とわかりやすい応用方法です。暗色物質や蛍光物質も含め、事実上すべてのポリマーを分析できます。試料のデータを基準データライブラリと比較することにより、不明な物質を同定し、偽陽性の発生を最小限に留めることができます。

ラマン分光法によるマイクロプラスチック分析

ラマン分光法は、コヒーレント光源(たとえばレーザー)から放出される光の非弾性散乱を利用します。ラマン測定にはしばしば専門的な知識が必要となることが主な理由で、ラマン分光法はIR分光法ほどは広く普及していません。特に、暗色ポリマーや蛍光ポリマーは分析が難しく、特殊なテクニックを必要とします。とはいえ、ラマン分光法ではナノメーター範囲までの微小なMPPの分析も行えるため、空間分解能の点ではラマン分光法が明らかに優位です。

マイクロプラスチックの分析に最適な手法

ラマン分光法とFTIR分光法は相補的な手法であるため、この問いに明確な答えを出すことは事実上不可能です。つまり、分光法の観点からは、両方の手法を一緒に使用して初めて完全なデータセットが得られるのです。とはいえ、実際には、そのようなケースは稀です。

どちらの手法にも明らかな長所と短所があり、通常は、それぞれの用途でどちらの手法が望ましいかが決まります。現在のところ、研究者でさえ、いまだに最適なアプローチを議論しています。お客様の用途に適した手法がわからない場合は、弊社のマイクロプラスチック専門家にぜひご相談ください。最適なソリューション選びをお手伝いします。

Microscopic image cotton fiber
Ft ir analysis aluminiumoxide filter EN
Ft ir identified polyamide EN

 弊社の各種装置とマイクロプラスチックの詳細は、弊社までお問い合わせください。

マイクロプラスチックのFTIR分析

FTIR分光法は、マイクロプラスチックの研究においてこれまでに見出された中で最も一般的なアプローチです。ワークフローは非常にシンプルで、精度と信頼性の高い結果が得られます。特に、焦点面アレイによるFTIRイメージングは、最先端ソリューションです。FTIR装置のセットアップについて詳しく知りたい場合は、LUMOS IIおよびHYPERIONのウェブサイトをご覧ください。

FTIRの要件と試料の準備

試料に応じて、透過法(非接触で、IR光がMPを完全に通過する)と全反射吸収法(ATR:接触が必要で、IR光がMP表面にわずかに貫通する)のどちらかを使用できます。反射での測定も可能ですが(非接触で、IR光がMPを2度通過しなければならない)、ここではそれについては議論しません。

透過測定は標準的なアプローチですが、IR光が検出器まで自由に通過できるようにする特殊なフィルターが必要です。テフロン(PTFE)膜、金属メッシュ、シリコン、酸化アルミニウムからお好きなフィルターをお選びいただけます。どれにもそれぞれの長所と短所がありますが、酸化アルミニウムが一般によく使用されるため、弊社のウェブサイトおよび動画では、酸化アルミニウムを例として使用しています。一方、ATRは、複雑な試料の準備も特殊なフィルターも必要ありません。標準的なニトロセルロースフィルター上のマイクロプラスチックを、あるいは堆積物やその他の複雑な材料上にあるマイクロプラスチックでも直接分析できます。

飲料水やその他の飲料の分析を行う場合は、適切なフィルター材料で液体をろ過してから分析します。河川や海の水を分析する場合は、密度分離によって木、砂、海藻などの物質を除去する必要があります。これには、さまざまな濃度の食塩水を使用します。準備した試料は、IR分析の対象とする前に完全に乾燥させる必要があります。場合によっては、試料をろ過する前に酵素消化やH2O2処理を行って有機汚染物質と生物的汚染物質を除去しておく必要があります。

マイクロプラスチックのFTIRマッピングとイメージング

最も簡単な方法は、まず目視で注目する粒子を見つけてから、化学マッピングで特性を1つ1つ評価していくことです。この「おきまり」的なアプローチは、非常に実行しやすい一方で、手作業で検索を行うと膨大な時間がかかります。このため、FTIRマッピングによるマイクロプラスチック分析の作業を労力のかかり過ぎないワークフローにするには、自動的な外観検査による同定が重要な要件となります。一般的に見つかるあらゆるポリマーの赤外線スペクトル基準ライブラリにより、測定後、直ちに明確な同定が得られます。

自動的な外観検査による同定では人的ミスが低減されますが、この方法には小さい粒子を見落とすというリスクがあります。小さい粒子はコントラストが低くなる場合があるためです。人的ミスをほぼ完全になくすには、FTIRイメージングがより安全なアプローチです。FTIRまたは焦点面アレイ(FPA)のイメージングは、マイクロプラスチック分析に対する最先端ソリューションです。このソリューションは、一点マッピング分析と比べて迅速に分析でき、空間分解能も高くなります。

通常、イメージングでは、マイクロプラスチック粒子を乗せたフィルター全体が1度のセッションで分析されます。評価が化学的な情報のみで行われるため、視覚コントラストの低い小さな粒子を見逃す可能性が大幅に低減します。マイクロプラスチックのFTIRイメージングの詳細については、動画をご覧ください。

マイクロプラスチック粒子のFTIR分析に対する最良のアプローチ

この問いに対する明確な答えを見つけることは、やはり困難です。先駆的なアルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所、オールボー大学などの研究者達は、FPAテクノロジーを頼りにしています。しかし、低濃度のマイクロプラスチックの特性を評価するような一部の事例では、マッピング実験の方が効率が高くなっています。

弊社は、FTIRによるMP分析における長年の経験を備えた振動(マイクロ)分光法の専門家として、マイクロプラスチックの調査における皆様の要求を最もうまく満たすソリューションを見つけるお手伝いをします。詳細は何なりとお問い合わせください。

FTIRマッピングによる海塩のマイクロプラスチック分析

Slider LUMOS II
Polymer in database
ATR Spectra of natural cellulose

マイクロプラスチックのラマン分析

ラマン分光法では、最も小さい微細構造および粒子(>0.5 µm)を検出できます。これは、通常のマイクロプラスチック分析で求められる機能です。ただし、その優れた特性はすべて、特定の試料要件を満たして初めて得られるものです。

ラマンの要件と試料の準備

ラマンを使用したマイクロプラスチックの分析には、調べる粒子と使用するフィルター材料のどちらも蛍光性を示さないことが重要です。さらに、ラマンでは、意図しない試料の過熱があると、黒いプラスチックやゴムをうまく分析することができなくなります。ラマン分析は、個々の試料の特性に応じて複数の測定パラメータの調整が必要となるため、FTIRより専門的な知識を必要とします。

それ以外では、ラマンでの試料の準備はIR分析の場合と非常によく似ています。飲料水は適切なフィルター材料(金コーティングしたポリカーボネートなど)でろ過する必要があり、木、砂、海藻などの不要な物質は、さまざまな濃度の食塩水を使用した密度分離によってあらかじめ除去しておかなければなりません。MPに有機汚染物質や生物的汚染物質(可塑剤、藻類など)が付着している場合は、試料をろ過する前に酵素消化やH2O2処理を行う必要があります。

マイクロプラスチックのラマン測定とイメージング

最初の選択肢は、試料を視覚的に分析して個々のマイクロプラスチック粒子を探すことです。コントラスト強調ツール(暗視野照明など)がMP粒子の検出に役立ちますが、自動的な外観検査による分析を使用するのがより安全で時間効率のよいアプローチです。位置が特定できたら、粒子が自動的に測定および分析されます。見つかった粒子の同一性は、一般的に見つかるあらゆるポリマーのラマンスペクトル基準ライブラリを使用して簡単に分類できます。

ただし、コントラストが低い無色のMPは見過ごされるリスクがあります。人的ミスをなくしたい場合は、自動ラマンイメージングが有効です。フィルター上の単一のMPを分析するのではなく、非常に狭い測定グリッドを使用してフィルター全体をスキャンすることができます。こうすると分析に必要な時間は長くなりますが、その後の同定は、専ら化学的なコントラストを頼りに行われます。これにより、MPが高い信頼性で定量でき、人的ミスの入り込む可能性が大幅に低減されます。

マイクロプラスチック粒子のラマン分析に対する最良のアプローチ

ここでも、明確な答えを見つけるのは困難です。マッピングとイメージングは総合的なMPP分析に有効なアプローチであり、それぞれに長所があります。時間を優先する場合は、マッピングのほうが適しています。

弊社は、MPP分析における長年の経験を備えた振動(マイクロ)分光法の専門家として、皆様がマイクロプラスチック分析に最適なソリューションを見つけるお手伝いをします。詳細は何なりとお問い合わせください。

SENTERRA II ocular open workplace model 4

マイクロプラスチックに関する詳細情報

AN M144
PN M181
PN M184

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