高エネルギーX線回折は、原子スケールの構造と材料特性を関連付けるための有効な手法です。Mo X線源と高い検出効率を有するLYNXEYE HE検出器を搭載したD8 ADVANCE HEは、広いQ範囲のデータ取得と優れたデータ品質を両立し、無機材料の詳細な結晶構造解析に適したプラットフォームを提供します。
ナトリウム(Na)イオン電池は、資源の豊富さ、コスト効率、低い環境負荷の観点から、従来のリチウムイオン電池に代わる有望な技術として注目されています。Naイオン電池の性能を最適化する上で、微細な構造的特徴が電気化学挙動にどのように影響するかを詳細に理解することは重要です。本レポートでは、Mo X線源を用い、Naイオン電池正極材NaNi0.3Mn0.3Fe0.4O2の構造解析におけるD8 ADVANCE HEの性能を紹介します。
Mo線源は、無機材料の結晶構造解析において複数の利点をもたらします。短波長(0.71 Å)により、より小さなd値および広いQ範囲まで測定できるため、微細なスケールの構造情報をより詳細に評価できます。また、試料吸収や蛍光X線の影響を低減し、特に高角領域でバックグラウンドを抑え、全体的なS/N比を向上させます。
NaNi0.3Mn0.3Fe0.4O2粉末を0.7 mm径の Kaptonキャピラリーに封入し、Mo X線封入管球、集光Göbelミラー、キャピラリーステージ、LYNXEYE HE検出器を搭載したD8 ADVANCE HEで測定を行いました。構造決定および精密化に適した高品質な回折データをわずか2時間で取得することができ、測定の高い効率性が示されました。
NaNi0.3Mn0.3Fe0.4O2は、NMCなど広く使用されているリチウムイオン電池正極材と同様に、O3型層状構造を有しています。この構造では、Na⁺イオンは稜共有したMO6八面体からなる2次元レイヤーの間の八面体サイトを占有します(図 2)。この層状配列によりNa⁺イオンの拡散経路が確保され、電池用途に適した構造となります。
図 3では、DIFFRAC.TOPASソフトウェアを用いたリートベルト構造精密化の結果が示されています。LYNXEYE HE検出器のCdTeセンサーの高効率・低ノイズ特性により、短時間測定でも高角領域のピークを容易に分離できます。さらに、1%未満の微量NiO不純物を検出・定量できました。表1にはリートベルト精密化で得られた代表的な構造パラメータが示され、Naサイト占有率および全ての結晶学的サイトの原子変位パラメータが精密化されています。
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