大面積EBSDマッピング

積層造形(Additive Manufacturing:AM)技術は、デジタルモデルから複雑な三次元形状を直接造形できることから、航空宇宙分野や医療分野など、多くの産業で広く利用されています。

本例では、粉末床溶融結合法(Powder Bed Fusion)による選択的レーザー溶融(Selective Laser Melting:SLM)プロセスを用いて、インプラント用途のオーステナイト系ステンレス鋼を製造しました。単一の400 Wファイバーレーザーを搭載した SLM125 装置を使用し、その後、DIN 50125 に準拠した引張試験のための塑性変形を試料に与えています。

材料内部における双晶境界および結晶粒径の空間的な分布を調べることで、製造プロセスが最終製品の機械的特性(強度や延性など)に与える影響をより深く理解することができます。この目的において、EBSDは金属および合金の微細組織進化を解析するための不可欠な分析手法です。

本測定では、従来の引張試験後に、非常に広い領域にわたるEBSDマッピングを実施しました。単一測定条件下において、500枚のEBSDマップを自動連続測定し、合計2億4千万ポイントに及ぶデータを取得することで、試料全体にわたる結晶配向(テクスチャ)の変化を評価しています。測定終了後は、データが自動保存され、EBSD検出器は自動的に退避し、電子ビームも自動的にオフにされます。

Figure 1: ARGUS™ orientation contrast (i.e. fore-scattered electron) image taken at the middle of the sample. Step size is 1 µm.

大面積EBSDマッピングを成功させるためのポイント

大面積EBSDマッピングを成功させるための最適な手順は、試料表面が平坦であること、および EBSDパターン信号が最も悪い位置、すなわち 変形が最も強い領域 で測定条件を設定することです。

試料が完全に平坦でなく、測定中にフォーカスのずれを補正できない場合には、EBSD信号が最も悪く、かつ表面凹凸が中程度の位置で条件設定を行うことを推奨します。この方法でも、当社のEBSDシステムである QUANTAX EBSD を使用すれば、わずかに飽和したEBSDパターンでもインデックス可能なため、他の領域においても問題なく解析を行うことができます。

EBSD解析から微細組織について何が分かるのか?

オーステナイトにおけるすべりおよび双晶による変形機構は、ARGUS™の方位コントラスト像(Figure1)およびEBSD方位マップ(Figure2、Figure3)において明瞭に観察されます。

Figure2では、粒の優先方位がIPFxマップ上で緑色から青色へと急激に変化している様子が確認できます。これは、特定の初期方位に対して最大の回転角を引き起こすひずみ量に到達したことを示しています¹。

同様の傾向は、一軸引張試験においてひずみ14%を与えた変形オーステナイトでも報告されています²。

微細組織を拡大して観察すると(Figure3)、典型的な変形オーステナイト鋼における粒界分布が確認できます²。このマップに見られる低角粒界(LAB)の高密度分布は、試料が積層造形(AM)プロセスおよび引張試験中に、高い冷却速度およびひずみ速度を受けたことを示す指標です。

さらに、このマップからは双晶粒界(TB)の高い割合も確認でき、これらの双晶粒界は、上述した両方の製造プロセス中に形成されたことが示唆されます。

References & Further Information

[1]: Wansong Li et. al, Materials Characterization 163 (2020) 110282

[2]: K. Yvell et. al, Materials Characterization 135 (2018) 228-237

Sample courtesy of Dr.-Ing. Kristina Roder, Research assistant, Chair of Lightweight Structures and Plastics Processing, Technical University of Chemnitz (Germany).