電子後方散乱回折法(EBSD)は、バルク試料の微細組織や結晶方位(テクスチャ)を定量評価するための、SEMベースの手法として広く普及しています。EBSDシステムの性能を決定づける主要な要素は、取得速度と感度です。これら2つの要素は、生産性を最大化するためだけでなく、指数付けのヒット率の向上や電子ビーム不安定性の影響を低減するといった、データ品質および信頼性の向上においても非常に重要です。
電子直接検出(DED)方式のEBSD検出器は、シンチレータ方式の検出器と比べて信号効率が大幅に高いことが知られています。しかしこれまで、取得速度の面では十分な性能を発揮できていませんでした。
BrukerのeWARP検出器は、電子直接検出技術とCMOS技術を組み合わせることで、検出感度とEBSD解析速度の限界を押し広げた先駆的なEBSD検出器です。eWARPは、中程度の照射電流および加速電圧条件下で、最大14,400フレーム/秒という高速でEBSDマップを取得することが可能です。
本例では、加速電圧10 kV、照射電流12 nAの条件で、二相ステンレス鋼のEBSDマップをわずか18秒で取得しました。1秒あたり14,400パターン以上が取得・指数付けされており、データクリーニングを一切行わない状態でも、ヒット率は98.5%に達しています。解析領域には1,525個の結晶粒が含まれており、平均等価粒径は33 µmです。結晶粒の検出はASTM E2627に準拠して行われました。
この二相ステンレス鋼試料は、フェライト相とオーステナイト相がほぼ同量含まれており、フェライト粒には塑性変形の痕跡が見られる一方で、オーステナイト粒の多くは完全に再結晶化していることが確認されました。