赤外スペクトル測定の一般的な下限である 400 cm-1から遠赤外方向へ波数域を拡張することは、多くの研究者が興味を持つところです。これまで測定範囲を拡張するためには、それぞれの領域に適したビームスプリッターと検出器を用意しなければならず、さらにオペレータは測定の度にそれらを入れ替える必要がありました。
ブルカーの研究用 FT-IR、VERTEX 70v ならびに INVENIO R では、独自のワイドレンジビームスプリッタとワイドレンジ検出器の組み合わせによる FM テクノロジーを装備することで、透過、反射、ATR のいずれの測定法においても、最大 6000 ~ 50 cm-1 のスペクトルを 1 回の測定で得ることが可能です。
ブルカーFMの付加価値
ブルカーFMの主な応用分野
ブルカー FM テクノロジーに関するアプリケーションノート AN M118 をご参照ください。
高分子材料は、様々な産業分野や日常生活において広く使用されており、その多くは、使用目的や必要な機能性に応じて、添加物や充填材がブレンドされています。
これらの複合材料の特性をより詳しく知るためには、中赤外だけでなく遠赤外領域におけるスペクトル情報も重要です。中赤外領域(4000 ~ 400 cm-1)では、主に有機化合物の組成や構造に関する情報が得られます。一方、FIR/THz領域(400 cm-1 以下)には、無機イオン化合物の格子振動や重原子を含む官能基の振動等による吸収が現れます。
中赤外ならびに遠赤外スペクトルの両方を解析することで、高分子材料の特性をより詳しく理解する上で重要となる情報を得ることができます。VERTEX 70v と INVENIO R に用意されたブルカー独自の FM テクノロジーオプションは、1回の測定で最大 6000 cm-1 から 50 cm-1 の領域をカバーする広域スペクトルが得られるため、このアプリケーションに最適なツールと言えます。
ATR法を用いた遠-中赤外スペクトルによる
ポリマー中の無機フィラー材料の定性:アプリケーションノート M123 をご参照ください。
同じ化合物でも、結晶、溶媒和物、脱溶媒和物、非晶質固体など、異なる固体形態で存在することがあります。また多形体の違いは、溶解度、融点、粒子径、溶解速度、吸湿性など、化合物の生体利用効率に関係する物理的特性に影響を与えます。そのため、製薬会社にとって多形の識別や特性評価がますます日常的になっています。ブルカー独自のFMテクノロジーは、遠-中赤外スペクトル全域を一回の測定で記録することができることから、試料の同定と多形体のスクリーニングを同時に行うことを可能にします。
ブルカーFM 遠赤外-中赤外スペクトル分析に関するアプリケーションノート M127 をご参照ください。
無機物質に関する赤外スペクトル分析において、重原子を含む結合の振動をはじめとする特徴的なバンドの多くが 400 cm-1 以下の領域に現れるため、遠赤外/テラヘルツスペクトルは非常に重要な役割を担っています。ブルカーの研究用 FT-IR、VERTEX 70v ならびに INVENIO R に FM オプションを加えることで、光学部品を交換することなく、標準的な中赤外スペクトルと高品質の遠赤外/テラヘルツスペクトルを同時に取得することができます。
さらに ATR(減衰全反射)法を用いることで、従来のポリエチレン錠剤法やヌジョール法による遠赤外/テラヘルツ透過測定に比べて、試料調製の大幅な簡素化が可能です。ダイヤモンド ATR プリズムを用いたブルカーのプラチナ ATR は、そのすべてが反射光学系となっているため、FM オプションとの組み合わせに理想的なアクセサリです。
ATR スペクトルでは、透過スペクトルと異なるバンドの位置と強度を示し、とくに遠赤外領域や一般的に高い屈折率をもつ無機化合物においては、この現象がより顕著となる場合があります。この問題に対しては、ブルカーの OPUS ソフトウェアのアドバンスト ATR 補正機能を用いることで、FM オプションによる遠赤外/テラヘルツ ATR スペクトルを文献等にある透過スペクトルと比較することが可能になります。
炭酸塩鉱物の遠赤外 ATR 分光分析:
アプリケーションノート M122 をご参照ください。
ブルカーならではの FM テクノロジーに加え、この機能による中-遠赤外 ATR スペクトルライブラリーが発表されました。これにより、特に遠赤外/テラヘルツ領域でのスペクトル検索と同定プロセスが大幅に効率化されます。このライブラリは、検索可能なスペクトル範囲の下限を一般的な 400 cm-1 から 30 cm-1 まで拡張した世界初のものです。ブルカー FM テクノロジーと新しい FM ATR ライブラリーを組み合わせることで、ユーザー独自の FM ATR ライブラリーを製品や化合物のクラスごとに構築することも可能です。
ブルカー FM ATR ライブラリー:
プロダクトノート PN S39 をご参照ください。