PDF解析は、ガラスなどの非晶質材料における短距離原子秩序に対する有効な評価手法です。高エネルギーX線源(Mo)とLYNXEYE HE検出器を搭載したD8 ADVANCE HEは、PDF解析による局所構造評価に適したプラットフォームを提供します。短波長のMo線源(0.71 Å)により、高品質なPDFを得るために重要な高いQ値(~17 Å⁻¹)でのデータ取得が可能となります。
ZIF-62は、一般組成[Zn (im)1.75 (bim)0.25](im=イミダゾラート、bim=ベンズイミダゾラート)を持つ混合配位子型の金属有機構造体(MOF)です。多くのMOFが加熱により分解するのに対し、ZIF-62は配位子比に応じて約400 ℃で融解転移を示し、さらに高温(約550 ℃)で熱分解します。冷却時には融液がガラス化し、イミダゾラートアニオンで結合された四面体配位Znカチオンの無秩序ネットワーク構造を形成します。
MOFガラスは、結晶性母相とは大きく異なる固有の微細孔構造を持つことから注目されており、ガス分離への応用が期待されています。、結晶とガラス双方の状態における構造を理解することは、性能との関係において重要です。
結晶性ZIF-62およびガラス状ZIF-62の粉末試料を、直径1.0 mmのガラスキャピラリーに封入しました。Mo X線封入管球、集光Göbelミラー、キャピラリーステージ、LYNXEYE HE検出器を搭載したD8 ADVANCE HEで、PDF解析に適したデータを測定しました。この検出器は短波長のX線に対して極めて高い検出効率を有するCdTeセンサーを備え、18時間で高品質かつ低ノイズのデータセットを取得できます。
PDF解析プロファイルはDIFFRAC.EVAのPDFツールを用いて生成されます。このツールはバックグラウンド生データおよび物理モデルに基づく補正を行い、試料由来のコヒーレント散乱成分を抽出します。直感的なワークフローとパラメータ調整効果の可視化により、最小限のユーザー入力で物理的に有意なPDFを迅速に生成できます。
図2には、結晶性ZIF-62とガラス状ZIF-62のPDFを重ね合わせた結果が示されています。原子間距離が約8 Å未満の領域では両者の曲線はほぼ一致しており、ガラス中でも局所的な四面体Zn配位が保持されていることを示しています。一方、10 Åを超える長距離領域では、ガラスのPDFはゼロへ減衰し、長距離秩序の消失を反映しています。図3では、DIFFRAC.EVAの原子対ヒストグラムツールの使用例が示されています。このツールは、データベース内の全構造から計算された元素別の原子対について距離分布を表示でき、ピークの帰属を決定する上で有効です。
例えば、Zn–Nヒストグラム(緑色の曲線)は2.1 Å付近に最大値を示し、多数の構造で一般的に見られるZn–N結合距離を示しています。この最大値は測定により得られたPDFの2.1 Å付近のピークと重なり、ZIF-62フレームワーク内のZn–N結合に対応します。
参考文献
K. Momma and F. Izumi, “VESTA 3 for three-dimensional visualization of crystal, volumetric and morphology data” J. Appl. Crystallogr., 44, 1272–1276 (2011).
謝辞
N. Krittametaporn and Prof. S. Henke, TU-Dortmund are thanked for providing the crystalline and glassy ZIF-62 samples.
BrukerのXRDソリューションについて: