What is EPR

EPRとは

EPR(電子常磁性共鳴法)は、不対電子のある種を検出するための分光法です。ESR(電子スピン共鳴法)ともいいます。不対電子のある物質は極めて多く存在します。例えば、フリーラジカルや多数の遷移金属イオン、材料の欠陥などに存在します。自由電子はほとんどがすぐに消滅しますが、それでも光合成や酸化、触媒作用、重合反応などのプロセスで重要な役割を担っています。このような電子の性質上、EPRは複数の領域(すなわち、化学や物理学、生物学、材料科学、医学等)で役立っています。

EPRでどんなことが分かるのか

不対電子を明確に検出できるのはEPRだけです。その他の手法、例えば蛍光法で示されるフリーラジカルが存在する証拠は間接的なものです。EPRだけが、疑念の余地のないフリーラジカルの存在を証明します。また、EPRには、検出した常磁性種を同定する特有の能力があります。EPRの試料は、局所的な環境に非常に敏感であるため、EPRでは、不対電子近傍の分子構造を明らかにすることが出来ます。EPRのスペクトルによって線形の劇的な変化が示されることがあり、これにより分子の運動や流動性といった動的プロセスの把握につながります。寿命の短い反応性フリーラジカルを検出するEPRスピントラップ法は、フリーラジカルを検出して同定するためにEPRがどのように活用されるのかを示す好例です。バイオ医学の分野では、多数の病理や毒性においてフリーラジカルが担う役割を解明する上で、EPRは不可欠な手法です。また生化学の研究では、特定領域のマクロ分子を「標識」するために常磁性分子(つまりEPRスピンラベル)を使いますが、スピンラベルが示すEPRスペクトルから、そのスピンラベルがどのような環境(疎水性、pH、流動性等)にあるのか判断できます。

電子とその周囲の原子核との相互作用を測定するためのEPR手法には、ESEEMとENDORがあります。これらは、金属タンパク質の「活性部位」の構造を精査するための極めて強力な手法です。定量EPRのもう一つの重要な用途は線量測定です。線量測定が利用されている例には、医薬品や食品の滅菌、放射線照射済み食品の検出、古代人の遺構の年代推定等があります。

EPRの原理

EPRは、NMR(核磁気共鳴法)に非常によく似た磁気共鳴法です。ただし、EPRではサンプル内の核の遷移を測定するのではなく、磁場の不対電子の遷移を検出します。プロトン同様電子もスピンしますが、これにより電子に磁気モーメントという磁性が生じます。この磁気モーメントが、電子に、小さな磁石のような挙動を引き起こします。外部磁場をかけると、常磁性電子はその磁場の方向と平行の方向になることも、逆平行方向になることもあります。これにより不対電子に明確な2つのレベルが生じるので、この2つのレベルの間を不対電子が移動するのを測定することができます。

まず、エネルギーレベルが低い方(磁場と平行)には、高い方(逆平行)よりも多くの電子があります。低エネルギーレベルの電子を励起して高エネルギーレベルにするためにマイクロ波照射の固定周波数を使います。また、遷移を生じさせるために、マイクロ波周波数によるエネルギーレベルの高い状態と低い状態の分離に正確に整合するような特定の強度で外部磁場をかけます。この状態に達するよう、外部磁石の磁場を掃引しながらマイクロ波照射の固定周波数をサンプルに照射します。磁場とマイクロ波周波数がEPRの共鳴(または吸収)を生じるために「最適な」条件は、共鳴条件といわれます。上の図の等式で説明されている条件です。下の図は典型的なEPR分光計です。