ALPHA II Touch PLATINUM ATR FTIR

ALPHA II FT-IRスペクトロメータ

赤外分光法は、分子振動による赤外光の吸収の様子から、分子構造に関する情報を得る分析手法です。赤外光の吸収は、分子を構成する原子どうしの結合に対応しています。分光計を使用して、分析対象物による赤外光の吸収を波数(波長の逆数)に対して測定します(一般的に4000600 cm-1程度)。

その結果は、化合物ごとに固有の「分子の指紋」を与えるスペクトルであり、有機および無機試料の定性、選別、検査等に使うことができます。

ATR spectrum polycarbonate
例:ATR法によるポリカーボネートの赤外スペクトル

フーリエ変換赤外線分光法(FT-IR)とは?

FT-IRは、赤外光の波数を連続的に変えながら試料に照射して分析する代わりに、すべての波数情報を含むスペクトルを一度に収集できるという特長を持ちます。

このためには、広い波長範囲にわたって赤外エネルギーを発生する連続光源が必要となります。赤外光は干渉計を通過し、その後試料に照射されます。

干渉計には一般的にマイケルソン干渉計が用いられ、干渉計の光路差を変数とする干渉光強度信号(インターフェログラム)を記録し、その信号をフーリエ変換(FT)することにより波数を変数とするスペクトルが得られます。「フーリエ変換赤外分光法」という名前はこのデータ処理方法に由来し、その英語名の頭文字をとり、一般的にFT-IR(またはFTIR)と呼ばれています。

 

 

なぜFT-IRを使用するのか?

FT-IRによるスペクトルの取得は、従来の分散型分光計よりもはるかに高速です。また、S/Nの点においても優れます。さらに、干渉計の光路差をレーザー光によりモニターしているため、得られるスペクトルの横軸はきわめて正確であり、再現性もはるかに高くなります。

FT-IRではどのように測定するのか?

測定手法は、分析の対象となる試料により異なりますが、透過法が基本となります。固体試料を測定する場合は、試料と臭化カリウム(KBr、希釈剤として)をそれぞれ微粉末にして均一に混合し、これを加圧成型して透明な錠剤にします。試料を薄片化できる場合は、薄片をそのまま、あるいは赤外光に透明な窓板で保持します。液体の場合はそのまま、あるいは赤外領域で透明な溶媒(例: CCl4)で希釈していたものを2枚の窓板で挟みます。

現在は、ATR法を用いることで、このような煩わしい前処理を省いて多くの試料を効率的に測定することが可能となっています。ATR法では、試料を化学的に非破壊な状態で測定することができるため、ほぼすべての固体および液体の分析に適用することが可能です。

ATRとは?

ATRとはAttenuated Total Reflection(減衰全反射法)の略で、FT-IRスペクトル測定の標準的な手法となっています。この手法では、ダイヤモンドやゲルマニウム等、高い屈折率をもつ光学材で作られたプリズムに試料を押し当て、その接触界面における全反射赤外光を測定します。

この手法では、試料表面に関する情報だけを取り出すことができるため、表面分析法としても非常に有用と言えます。

FT-IR分析の詳細については、インタラクティブに学べる「IRチュートリアル」と、以下の一連のビデオをご覧ください。これらを通じ、FT-IRスペクトルの測定からデータの評価方法までを、段階的に学んでいただくことが可能です。

赤外光とは何ですか?

赤外光(IR)は、可視光よりも長い波長の電磁放射です。したがって、我々人間の目には見えませんが、熱放射の形で知覚できる場合があります。 豆知識:太陽から放射されるエネルギーの半分以上は、赤外光の形で地球に到達します。

赤外光は物質とどのように相互作用しますか?

赤外光が物質に照射されると、分子と原子結合が刺激され、それらの回転や振動の状態が変化します。この励起エネルギーは分子の構造によって異なるため、物質による赤外光の吸収の様子を観測することで、物質を構成する分子の構造や特性に関する情報を取得できます。

赤外分光法はすべての物質を分析できますか?

ほとんどの物質について適用ができます。有機物質と無機物質の多くについて、応用が可能うです。ただし、金属や等核二原子分子(酸素分子や窒素分子)などの物質は、分析することができません。

どのような材料が一般的に分析されますか?

有機化学の分野においては、古くから物質の同定に用いられています。ポリマー、工業用化学物質、医薬品、薬物など、応用分野は非常に多岐にわたります。排水中の油分の分析など、公定法でも使用されています。赤外分光法は汎用性が非常に高くまた柔軟性もあるため、あらゆる業界、研究分野において利用者を見つけることができます。

どのような分析が可能ですか?

赤外分光法は、試料を構成する成分の特定する「定性分析」はもちろん、着目する成分がその試料にどれくらい含まれているかを調べる「定量分析」に用いることが可能です。定性分析は赤外分光法の最も一般的なアプリケーションであり、主に原材料の品質管理や異物分析、材料開発等の分野で利用されています。定量分析は、生産パラメータを評価するために産業プロセスで広く使用されています。

赤外分光法を使用するには専門家である必要がありますか?

必須ではありません。 赤外分光計は、今までになく使いやすくなっています。ほとんどの場合、初心者の方でも簡単にお使い頂けるようになっていて、現在ではタッチ操作によるシンプルな操作に対応したソフトウェアもあります。分析も自動化できるため、どなたでも分光学者になれます!

分析にはどれくらい時間がかかりますか?

これは、提起された分析上の問題に大きく依存します。ただし、化学物質としての異同判定などの簡単な分析であれば、1分程度の時間で十分です。

減衰全反射法(ATR)とは何ですか?

ATRは、赤外スペクトルを最も簡単に測定することができるサンプリング手法です。高い屈折率をもつ光学材(ダイヤモンドやゲルマニウム等)で作られたプリズムに試料を押し当て、その接触界面における全反射赤外光を測定します。試料に吸収のある波数領域では、吸収の強さに応じて反射光のエネルギーが減少してスペクトル上の変化として現れるため、これを分析することで試料表面に関する情報を得ることが可能となります。測定の詳細は、ATRの基本に関するビデオをご覧ください。

ATRはどのような場面で使用しますか?

ATRは汎用性に優れる手法であるため、あらゆる分析ニーズにおいて使用できます。固体でも液体でも、あるいは有機物でも無機物でも、試料をATRプリズムの上に置くだけで測定が可能です。試料を切り出したり希釈するといった前準備も必要ありません。ATRは赤外分光法における標準的な手法となっています。

透過法とはどのような手法ですか?

ATR法と異なり、この方法では試料に赤外光を透過させる必要があります。つまり、試料は厚みが非常に薄いか、希釈されている必要があります。希釈のため、試料と臭化カリウム(KBr)を粉末にして混合し、錠剤に成形することもあります。一方、ミクロトームなどを用いて試料を非常に薄い形に加工する場合もあります。これらの準備には多くの時間と労力が必要です。

透過法の用途は?

多くの分析においてATR法が標準的に使用されていますが、低濃度試料の定量分析や顕微赤外分光分析においては、現在も標準的な測定手法であると言えます。また、特定の産業や分野では、透過法を標準測定法として採用するケースもあります(例:薬局方)。

反射法とは何ですか?

反射法は、赤外分光法の第3番目の主要な測定手法です。最小限の加工しかできない、あるいは表面に触れることすらできないような試料に利用します(外部反射法)。また、金属等の表面に存在する非常に薄い試料を分析する場合にも利用します(反射吸収法)。

反射法はどのようなケースで使用されますか?

反射法によるスペクトルは、透過法やATR法によるスペクトルと異なり、試料の表面状態や基板の有無等によって大きく変化するため、適用範囲はある程度限定されます。しかしながら、表面に触れることができない貴重な試料の分析では非常に重要な手法です。例えば、絵画や美術品の保存修復の分野では、赤外反射測定の結果から、修復に必要となる化学情報を得ています。