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分光法の基礎

赤外分光法 基礎

ここでは赤外分光法の概要について、FT-IR ならびに各種測定手法に関する基本的な疑問に焦点を当てて説明します。

基礎

はじめに

赤外分光法および FT-IR 分光法とは何ですか?何か違いはありますか?

赤外分光法

赤外分光法 (略称として IR とも呼ばれる) は、ほとんどの分子が電磁波の赤外領域の光を吸収し、それを分子振動に変換するという事実に基づきます。この吸収は、その物質に存在する化学結合の特徴を表します。

分光計は、この吸収の程度を波長または波数の関数として記録します (波数の場合、一般的に 4000 〜 400 cm-1 程度)。得られる赤外スペクトルは、その物質を特徴付ける「分子の指紋」と見なすことができ、有機物および無機物の定性に利用することが可能です。

FT-IR分光法

赤外分光測定において、古くは赤外光の波長を分散させ、これを切り替えながら試料に照射して逐次スペクトルを記録する方法が主流でした。一方ここで取り上げる FT-IR (フーリエ変換赤外分光法) では、一定の範囲の波長情報を同時に記録します。

FT-IR では、光源から発せられた幅広い波長範囲にわたってエネルギーをもつ赤外光を干渉計によって干渉させ、この干渉光を試料に照射させます。

記録されるデータはインターフェログラムと呼ばれ、最終的な赤外スペクトルを得るためには、これを変換する必要があります。

IR と FT-IR の違い

このインターフェログラムは、波長の関数としてではなく、干渉計の光路差を関数として赤外光の強度を示します。

これを我々が必要とする、波数を関数とした赤外スペクトルに変換するのがフーリエ変換です。つまり FT-IR の FT は、フーリエ変換 (Fourie Transform) の頭文字に由来しています。

FT-IR による赤外スペクトル測定は、従来の分散方法と比較してはるかに高速であるなど、数多くの利点があります。

FT-IR スペクトルは非常に高い信号対雑音比 (S/N) を示し、また横軸についても非常に正確なレーザーで校正されているため、はるかに高い精度を示します。

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赤外スペクトルはどのように測定されますか?

透過および反射法による赤外スペクトル測定の概念図

測定の方法は、分析対象物によって異なります。 固体試料の場合、古典的には、粉砕したのち赤外光に透明な希釈剤 (代表的には臭化カリウム; KBr の粉末) に混ぜて錠剤にする、あるいは試料を薄くスライスします。液体の場合はそのまま、あるいは赤外領域に吸収の少ない溶媒 (例: CCl4) で希釈したものを KBr などの窓板ではさみ、試料とします。

試料の厚みが十分に薄い場合 (およそ 15  µm 以下)、たとえばポリマーフィルムや金属表面のコーティング、あるいは生体組織の切片など、そのままの状態で赤外光を透過させることができる場合は、上記のように希釈することなく直接測定することができます。

もうひとつの代表的な測定手法は反射法です。ここで赤外光は、測定対象物の表面とのみ相互作用します。拡散反射法は粉末試料や、あるいや土壌やコンクリートなど、透過法で分析するのが非常に難しい固体試料の分析を可能にするサンプリング技術です。

現在では、試料の前処理をほとんど必要とせず、非破壊な状態で測定が可能な ATR 法が測定手法の主流となりつつあります。ATR 法では、気体を除くほぼすべての形状の試料をそのまま測定することが可能です。

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ATR、減衰全反射法とは?

赤外光がATR結晶を通過し、結晶とサンプルの間の界面で反射される様子

タイトルが示すように、ATR は減衰全反射 (attenuated total reflection) の略であり、現在の FT-IR スペクトル測定の標準的な手法になっています (全反射吸収法と呼ばれることもあります)。 ダイヤモンドや ZnSe、あるいはゲルマニウムなどの高屈折率材料の結晶に試料を押し当て、その接触面で赤外光を反射させます。 Note:  再現性の高いスペクトルを得るためには、試料と結晶の接触状態が重要です。

これにより物質の特性を示す赤外スペクトルが簡単に得られますが、観測される赤外吸収の強度は、ATR 法特有の物理的な影響により、一般的な透過スペクトルとは異なります。

ただしこれが、ATR スペクトルの解釈がより難しいということを意味するわけではありません。ATR スペクトルを透過スペクトルを近似させる変換ツールが用意されており、例えば、今現在取得した ATR データをスペクトルライブラリに含まれている古い時代のスペクトルと比較するといった場合に特に便利です。

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赤外反射法とは? 拡散反射法とは?

赤外分光法における代表的な 3 つの反射法

反射法は、赤外分光測定において特別な位置を占めています。基本的に拡散反射法以外の反射法は、非破壊的であり、そのため前処理を加えることが出来ない貴重な試料等の分析に有用です。

光の反射の大きさは、物質の屈折率によって決まるため、吸収のある領域では反射の強度が大きく変化します。したがって、とくに鏡面反射スペクトルは透過法とは大きく異なります。

その理由は、吸光特性にあります。分離した赤外信号を見てみましょう。独立した吸収帯では、屈折率は長波長(低波数)に向かって最大を示し、短波長(高波数)に向かって最小を示します。 したがって同様に、スペクトルも一次微分のような形をした同じパターンを示します。

ビデオとチュートリアル

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赤外スペクトルの生成の様子を説明します。
一般的な手法となっている ATR について紹介します。
赤外反射測定の様子を紹介します。
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FT-IR アプリケーション

FT-IR の基礎:化学定性
FT-IR の基礎:材料の検証
高温状態のタールおよびアスファルトの測定

よくある質問

最後に

FT-IRに関するよくある質問

赤外光とは?

赤外光 (赤外線、IR)、より正確には赤外放射は、可視光よりも長波長側の電磁放射です。人間の目には見えませんが、熱放射の形で知覚することはできます。

豆知識:太陽から放射されるエネルギーの半分以上は赤外線の形で地球に到達します。

赤外光はどのように材料と相互作用しますか?

赤外光を物質に照射すると、物質内の分子や原子結合の動きを刺激します。この動きは、回転や振動など、さまざまな形をとることができますが、分子の励起の様子を調べることで、赤外光を照射された物質の科学的な構造と特徴を知ることができます。

赤外光はすべての材料を分析できますか?

一般的には YES です。有機物と無機物は赤外光を用いて同様に調べることができます。 赤外光による分析の基本的な要件は、材料が赤外光を吸収することです。 ただし、金属や単原子ガス(希ガス)などは、直接分析することはできません。

一般的に分析される材料はどれですか?

赤外分光法は、特に有機物質の分析において多くの情報が得られることから、様々な分野において頻繁に利用されています。これには、高分子、医薬品、あるいは工業用化学物質の識別、水中の油分などの含有量の測定が含まれます。赤外分光法は非常に柔軟性があり、そのアプリケーションは非常に多く、すべての業界および研究分野において FT-IR のユーザーをすぐに見つけることができます。

どのような分析が可能ですか?

赤外分光では、試料が何でできているか(定性)だけでなく、着目する成分がどれだけ存在しているか(定量)を知ることもできます。定性分析は、赤外分光法の最も一般的なアプリケーションであり、主に原材料の品質管理、故障分析、科学研究で使用されます。定量分析は、生産パラメータを評価するために工業プロセスの現場で広く使用されています。

赤外分光法を利用するには、専門家である必要がありますか?

絶対にありません。FT-IR はかつてないほど使いやすくなっています。ほとんどの場合、専門家以外の人でも簡単な操作手順で分析を実行できるよう、シンプルなソフトウェアが用意されています。解析の多くも自動化できるので、誰でも分光学者になれます!

測定にはどのくらい時間がかかりますか?

これは、目的によって大きく異なります。ただし、化学物質の簡単な定性であれば、1 分もかかりません。

ATR とは何ですか?

ATR は、赤外スペクトル情報を得るための代表的なサンプリング手法のひとつです。試料を屈折率材料の結晶に押し当て、その測定面で赤外光を反射させることで ATR スペクトルは得られます。 詳細については、ATRの基本に関するビデオをご覧ください。

どのようなときに ATR 法を用いればよいですか?

ATR は汎用性の高いアプローチで、どのような場合でも有効といえます。固体でも液体でも、あるいは有機物でも無機物でも、試料を ATR プリズムの上に置くだけで測定が可能です。特別な前処理も、希釈することも不要です。ATR は現代の赤外分光法における標準的な測定手法になっています。

透過法とはどのようなものですか?

ATR とは異なり、この方法では試料に赤外光を透過させる必要があります。これは、場合によっては試料を薄くする、あるいは希釈する必要があることを意味します。希釈のために、少量の試料を臭化カリウム (KBr) に混ぜて、これをペレットにプレスする場合もあります。試料を薄くする場合には、ミクロトームなどを使用しますが、いずれの場合も試料の準備には多くの時間と労力、場合によっては経験が必要となります。

どのような場合に透過法を用いますか?

今日、日常的な分析においては透過法を使う頻度が少なくなっているかもしれません。ただし、液体中の低濃度成分の定量や、顕微測定においては非常に重要な測定手法です。また医薬品業界など、特定の産業分野においては、透過法が標準手法として指定されているケースもあります。

反射法とはどのようなものですか?

反射法は、赤外分光測定における代表的な手法のひとつです。対象物の表面で赤外光を反射させることで、その部分の化学的な特性を解析することができます。表面を直接測定できない場合は、KBr による希釈が必要となることもあります。金属表面の非常に薄い層の測定は、透過反射法が有効です。

どのような場合に反射法を使いますか?

赤外光を透過させることができない試料、前処理ができない試料、あるいは試料表面に触れることができない場合に反射法は有効です。とくに加工できない貴重な試料(例えば美術品)でも、非破壊、非接触測定が可能です。